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November 2003 アーカイブ

November 19, 2003

夜のお散歩が、スキ


暗い夜道をてくてく歩くのには
そう、ちょうど今くらい寒い方がいいと思うのです。

キミが隣にいて
願わくばその小さなポケットに
繋いだ二つの手をぎゅうぎゅう押し込んで
少し息をあげて
唐突に笑ったり
てくてくと
コンビ二で肉まんでも買って
あたしの好きなアイスでも
キミの好きなチョコレートでも
とにかくなんか遠足気分で買ったりして
たまにはでたらめな歌でも歌ったり
いつまでだって

そんなふうに歩きたいと思うのです。


馬鹿みたいにわくわくしながら
横目で車たちが流星のように飛ばすのを見送り
世界中でたった二人
ドラクエでもなんでも
とにかくなんか倒しに行く途中の勇敢なマーチのように
てくてくてくと
昼とは違う街の様相に
たまにはわざと
道を間違えて
迷子のふりしてはしゃいだり
この夜の気まぐれなお散歩が
いつまでだって
いつまでだって

こんなふうに終わらなければいいと思うのです。

多分キミは気づかないけど
キミのその唇に不意打ちのキスをしてやろうと
あたしは小さなコドモのように企みます。
キミのステキなステップを邪魔せずにキスする方法を
てくてくてくてく
歩きながら、考えます。

だけど
夜のお散歩のホントにステキなところは


たとえ左側にキミがいない夜に
こんなことを考えていても

そうヒクツになったりしなくてすむところです。


それは多分
夜が冷たく
ひどく冷たく
だけどそのぶん
ほんとはひどく優しいからです。


そんな夜に包まれてただ歩けば
今はもう遠い他人のキミに
少しだけ
自然と近づける気がするのです。
気負いもなく
哀しみもなく


てくてくてくてくてくてくてくてくてくてくてく。

November 13, 2003

窓越しが、スキ


会わないヒトがいます。
もう会わないヒトがいます。
物理的には会えないわけではないけれど
なんとなく、会わないヒトがいます。
少なくとも、約束を取り付けたりしては、会わないヒトがいます。
大切なヒト。
何人かいます。


彼らとはメールやら電話やらで
気紛れに気休めに連絡をとります。

モノを介したこみゅにけーしょんは
ゴム越しの愛のようにキレイで理性的です。
あたしはいとも鮮やかに
誘い、委ね、茶化し、響き、

無意味な駆け引き。
それはどこにも行き着かない自己充足型のトキメキです。


似たようなことは、電車の窓越しにも起こります。

暗い暗い窓。
景色はぼんやりと闇に侵食されながら超高速で流れ去ります。
疲れきった一日を締めくくるのは大抵そんな電車で、
あたしはひんやりとしたドアに身をなるべく寄せます。


そんなとき。
それは唐突に始まるのです。


夜の暗さが透明だった筈の窓をいつしか鏡のようなものに変え
外の風景に重ねたように、いくつもの顔が浮かびます。
そのいくつもの知らない顔の中
あたしはあなたを選びます。
あなたもあたしを選んだりします。

偶然かも必然かも
どちらかのふりをしているだけかも
でも、とにかく。
あたしたちは目を合わせるのです。
ドアの傍のあたしと、つり革を持ったあなた。
その距離は見知らぬあたしたちにとっては相当なもので
見知らぬあたしたちの間には
何人ものやっぱり見知らぬヒトたちが団子状に連なります。

けれどそのヒトたちを飛び越えて
誰も気付かないよう、そう、窓越しに
あたしたちは恋のゲームを始めます。
合わせてしまった目をどちらから逸らすのか。
駆け引きは始まります。

大丈夫。これは窓越しだから。
あたしたちはいつだって、
外の景色を追っていたと、
最初から見知らぬヒトとなんて目なんか合わせてないと、
そう、いつだってこんなにも自然に言い訳できる。

理性的な言い訳が周到に用意されているのをいいことに、
あたしたちはささやかな無茶をします。
極めて冷静に
あたしたちはしばらくじっと見つめあいます。
駆け引きを、目で。
絡んだ視線はどこまでもリアリティがなく、
同時にどうしようもなくあたしを挑発します。


理性的な欲望も、
乾いてて、簡単で、大人で、楽で、
たまには、イイものだと思うのです。

降りていく知らないあなたの指にわざと触れたいと
手を伸ばし、だけどやっぱりやめる。

階段に向かう姿を明るいホームで
また透明になった窓越しに見て、
もう、会わないんだ、と思うのが
なんともまた刹那的で

揺れる電車の中
取り残されたあたしは独り
笑いを噛み殺し密やかな悦びに浸るのです。

November 9, 2003

たまのココアが、スキ

喫茶店に入ると、
あたしは9割の確率でコーヒーを頼みます。
残りの1割は体調がどうも優れない日で、
そういう時には胃に優しく、紅茶やジュースを頼みます。

そう、要するに根っからのコーヒー党なのです。
一日に必ず5杯以上は飲んでいると思われます。
三度の食事、と二度の休憩。
全部最後はコーヒーで締めます。

それでも。
好きな飲み物を聞かれると、あたしは少し悩みます。


それは、

現実を日々一緒に生きていけるヒトと
夢のような偶然の中でしか会えない大好きなヒトと

その間で揺れ動く気持ちにちょっと似ています。

ココアを飲むことは多分年に数えるほどしかない。
それでもそのあたたかく甘ったるい夢の飲み物は
ちいさいあたしを撫でるように
ぐっと落ち着かせてくれるのです。


たまにしか飲まない筈なのに
ココアを飲んでいる風景はいくつもあたしの中に残っていて。

それはやっぱりココアのように
ひどく幼稚に甘ったるかったり
夢の中の沈まない太陽のようにあったかかったり
それとも逆に
その味でゴマカソウとした外の容赦ない北風の冷たさだったり


でもとにかく。
いずれにしろとてもイトオシイ風景たちなのです。

でもココアは日に5杯は飲めません。
そんなことしたらもう夢遊病者にでもなっちゃって、
夢のクニでも目指して遠く逃避行に出ちゃったりしちゃうからです。
だからこれからも、そう少なくともしばらくは、
あたしはコーヒー党を名乗り続けるでしょう。

だけど。

たまに飲むココアが、やっぱりスキです。


たまには、素直になってもいいですよね。


November 5, 2003

噛むのが、スキ

だだっ広い、世界の果てまで見渡せそうな雄大な草原。

あたしはひどく苦手です。

一人ぼっちただただ滑らかに広がる大地の真ん中に立つと、
あたしは、もう、どうしようもなくなってしまうのです。
まずは皮膚が、そして終には燃えきるはずのない頑丈な骨まで
あたしを構成する全ての細胞、分子、そう、なんでも

その全てが、
「あたし」というようやく集まった一つの身体から
遊離していってしまう感覚に陥るのです。


何とか止めなきゃ、繋ぎ止めなきゃ、
必死にそう思います。
せめて大声でめちゃくちゃに叫べたら、と思います。
声に出して引き止めれば、少しは、、少しは、、


こんな気持ちになるのは、
なにも草原の真ん中に立ってるときだけじゃありません。
巡る日々の中、黒い渦は、いつだってすぐそこにあります。

そんなとき、あたしは声なんてあげません。
無用に注目は集めません。
その代わりに噛みます。
噛みます。
噛んで、その拡散を止めるのです。


それは唇だったり、小指だったり、人差し指の側面だったり、ときには手の甲だったりします。
噛んでてあまりにも不自然なポーズにならないところがいいです。
噛むと言っても、痕が残ったり、ましてや血がでたり、そんな自傷行為は要りません。

必要なのは、その甘い痺れだけ。
甘く、優しく、切なく、際限なくあたたかく。

そう、それはどこか、
ライオンの子が母親に優しく噛まれるときの感じかもしれません。


それともそう、それはどこか、
天国のような匂いのフトンの中で、
誰かに首を絞めてもらったときの感じかもしれません。

甘い痺れは、
もう一度あたしという人間と世界との境界線を教えてくれます。
その甘さは快感となり、
あたしは全てを忘れ少しずつ内側に溶けます。
だるくだるくあまく。
痺れているのは痛いからか夢だからか。
わからなくなってほっとします。

そしてあたしはそうやってほっとすると、
そう、
いつだって少しだけ泣きたくなってしまうのです。

November 2, 2003

ロングスカートが、スキ

友達に
脳にNLSという装置が装備されているヒトがいます。

「ナマアシ・ロックオン・システム」。

要するに、街中でナマアシの女の子を見つけると、
もうどうこう考える前に、目が勝手に

「ナマアシ」に「ロックオン」

してしまうということです。


確かにあたしもナマアシは好きなのだけれど
でもやっぱりロングスカートに魅かれてしまいます。
ちなみにタイトでスリット入りもよいのですが、
できればふんわりしててスリットのないものがいいです。

ロングスカートのすごいところは、ここです。


「隠されているのに、ものすごく無防備」


欺くのです。そしてしなやかに微笑むのです。


長い布が纏わりつく
その隠された脚を想像する手掛かりは
僅かに覗く足首しかなく
それは一見とても保守的な履き物であると言えます。

だけど風の強い日
その裾は、フレアーが入っていればいるほど
悪戯に高らかと舞い上がります。

その危うさは、ミニスカートが捲れるのではわけが違う。

もう、ロングスカートの捲れ方は、

一つの革命であり

儀式であり

魔がさした長女が台所で
給仕と軽やかにステップを踏み踊るダンスの象徴でもあります。

ミニスカートと同じようにすーすーするロングスカート。
ただ
その秘密を暴くには、
いつもより少しだけタガが外れた情熱が必要なのです。
めちゃくちゃな
笑っちゃうような
そんなバカみたいな嵐が。

そう。
彼女たちは、いつも、静かに待つのです。
不条理に満ちた嵐を。


そして、
多分とてもキレイに僅かに口端をあげて笑うのです。
ちょっとだけ、みっともない声を小さくあげて。


November 1, 2003

キミが、スキ

知ってた?じゃあ、知って?
要はね、あたし、それだけなんです。

まあ例えばそう
割にくぼんだりしぼんだりだったりもしたりだったりだけど


けどね
全部開け放って
そう
一番簡単なカタチに戻してあげたら
そしたら
そしたら
これだけだったんです
笑う?かもねー
だって
ねえ
これだけにしたら、ずいぶんと楽しいんです

そう、だから、あたし、いま、これだけで、ここに、やっといる。

ほら思い出すよ
いつだってきっとそうだったんです


スキなもの、数えて?
そうそれだけで唐突にゴキゲンならっきぃすとらいく
「いちにのさん!!」なら「に!」でフライング
いいよ!ねえ!
雨の祝福を受けて
たまにはダッシュしちゃったりね

そう、だから、あたし、ずっと、スキだけで、ここに、やっといた。


だからさ。
しばらく聴いてみて。
そうだねぇ
飽きるまで。


飽きたらまた
そうだねぇ
キスでもしながら
何かいいこと考えよ。
ね。

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