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玉ねぎが、スキ

玉ねぎがスキで、特に火を通したものがスキで、
昔からフライドボテトとオニオンリングの選択肢があるファストフード店では
なんの迷いもなくオニオンリングを選択してきたけれど
蒸し野菜の素朴さと贅沢さに目覚めてからは
もう本当に、玉ねぎを蒸しては、そればかりを食している。


野菜に生まれ変わるなら、玉ねぎになりたいと思う。


なにより、いろいろと表情があるのがよい。
生のままだと苦くって辛くって
切る時なんて相手に涙を流させるほどの攻撃力を見せるのに
ちょっとあっためただけで
それはそれはいとも簡単に甘くなってしまう
そのギャップが愛おしい。


火が通ってゆくにつれて白が透明になっていって美しい筋の模様が際立って
最終的には飴色になるのもうっとりするようなロマンチシズムを感じてしまうのだ。


そもそもあのぽってりとした丸い形状もとても魅力的で。
何層にもなっているからといってどんどん剥いていくとただ中心にたどり着く。
外と中の境目が曖昧な部分もよい。外は中に自然と続いていく。


それに和食・洋食・中華はもとより、ベトナム・インド・イタリア・韓国、
どんな料理を相手にしても玉ねぎは臆することなく対峙する。
相手に染まることなく、自分を主張しながらも、見事なアンサンブルを奏でるのだ。


実は昔は
かみさまが配置したような美しい穴に感動し、
一番好きな野菜は、圧倒的にレンコンであった。
でもあれは憧れであって、自分がなるには少し難しい気がしている。
美しく凛としていながら、しっかりものな和風美人な印象。
質素堅実でありながら、たおやかで微笑みを絶やさないような。
残念ながらあまりにも素質を持ち合わせていない。


他にもトマトや人参も好きだけれど
あんなに陽気な人気者を目指すのもちょっと気が引ける。
生姜やニンニクはもうちょっと人生経験が必要だ。
そうやって考えていくと、もう玉ねぎ以外にはありえないのだ。




嗚呼、玉ねぎになりたい。
そうして美味しく食べてもらえればいいのに。


今日も丸のまま玉ねぎを蒸して、
その白い艶やかな肌に触れながらそっと目を閉じる。


その日のことを、夢想する。

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February 13, 2011 10:48 PMに投稿されたエントリーのページです。

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