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December 2004 アーカイブ

December 27, 2004

長い髪が、スキ

まあ。
スキだからこそ人生の半分以上
この同じ胸にかかるほどのストレートロングでありつづけているわけなのですが。
それでも
ショートにしたり
パーマをかけたり
はたまたワカメちゃんも桃井かおりも驚きの大正モガ風おかっぱ頭にしたり

そんなこともかつてはあったのです。


けれどいつだって。
そうやって「なんとなく厭きた」という曖昧な理由で髪型を変えてしまった翌日には
あたしは引き篭もりにならんばかりの勢いで後悔し
決まってエレンス2001を気休めに頭中に振り掛けるのでした。

長い髪がスキなわけはいくつかあります。
例えばあたしの髪の癖の按配がロング向きであったり(うねりが大きいのです)
意外とセミロングなどよりアレンジがしやすかったり
少女好きなあたしですから、ついそのベタな少女っぽさについ心惹かれてしまったり
それに暇な時には三つ編みをだらだら編んではほどいてみたり
新しいまとめ髪を開発したり
それに、不機嫌なときにはそのストレスを両の10本の指に溜め、赴くままに髪をぐちゃぐちゃぐちゃっと攻撃的頭皮マッサージのように掻き乱したり(ボリュームある長い髪はなんだかシューベルトの歌曲のような大袈裟さで跳ねては絡まり、なかなかどうして、見た目はさておき、本人はしごくすっきりしたりします)


要するに長い髪は便利なわけですが。
でも一番得したな、って思うのはやっぱり撫でてもらったときです。

もっと短い髪だったら。もっと短い距離しか撫でてもらえないから。

背中の真ん中まで伸びたこの髪を
すぅーんと撫でてもらうときは、やっぱりすごく嬉しくなります。
大して手入れもしていないし毛先は痛んでるわけですが。
それでもたまたま髪の話題で、もしくは誰かが冗談で、それとも美容師さんが仕事で。
この髪をすぅーんと撫でるとき。
あたしは髪が長くて本当によかったと一人ほくそえむのです。

みんなは髪を撫でていることになっている。
でもあたしは首や背中や肩や、身体を、皮膚を、
こっそり撫でてもらっているのです。

それはなんだか白昼堂々と行われる淫靡な行為のようで。
あたしは必要以上にドキドキしてしまいます。
皮膚の上を誰かの皮膚が滑るよりも。
皮膚プラス髪があたしの皮膚にもたらすちょっと複雑な感触の方が。
なんとなく。
より上品でより官能的でより背徳的でより神秘的な
そんな気分にさせられるのです。


長い髪の秘密。

これは、誘惑です。

December 14, 2004

口癖が、スキ

初めて自覚したのは
多分ジェニファーのときだと思います。


5歳で突然異国の地に放り入れられたあたしにとって
ぽっちゃりした外見を裏切らない寛容の見本のようなジェニファーは
数少ない貴重な友達でもあり、また会話モデルでもありました。
ジェニファーとばかり居たあたしにとっては
ジェニファーの英語が世界標準だったのです。
彼女の一語一語は無意識にあたしの会話用テキストとして記録され、
いつしかあたしの口は。
ジェニファーとそっくりに機能するようになっていました。


ヒトに指摘されてようやく気付いたその現象は。
なんだかひどく嬉しかったことを覚えています。
彼女の国のコトバを手に入れて。
あたしはようやくジェニファーの世界に属せたのです。
ある意味で。
彼女の一部があたしになったのです。


そしてあたしたちは実にたくさんのことをその同じコトバで喋りました。
あたしたちは美味しいチョコの話を、ママの小言の話を、近所の猫の話を、新しくできた視聴覚室の話を、ナルニア王国の話を、州名を暗記する便利な歌の話を、プラスチックブレスレットの新しい編み方の話を、図工用糊を何故かいつも食べてしまうクリスの話を、ちょっとだけスキだったアレックスの話を、

あのころのジェニファーの口癖を明確に思い出すことは、もう、できません。
でも確実に。
今あたしの喋る英語の一部は
ジェニファーなのです。


日本語は英語ほどそう影響力はありませんが、
それでもあたしはヒトの口癖がうつる方だと思います。
うつってしまうのか。わざとうつるのか。
最近では最早よくわかりません。
でも多分。
キミの口癖は、わざとうつってるのだと思うのです。
注意深く真似て。
できればいつまでだって忘れないで。
知らぬ間にあたしのコトバにしてしまいたいのです。


そうすれば一時の自己中心的な盛り上がりで
「パッショネイトってこういうことね」と
諸々を燃やして割って流して壊して捨てて吐いて剥いで裂いて斬って


だとしても。


キミのコトバは多分。
そんなあたしを嘲るようにもうすっかりあたしのコトバになってしまってて。
届かないところで静かに勝手に居座り続けるのです。
ぱっしょねいとなんて届かなところで。
静かに。
あるいは気紛れに
鈴の音のような微かな頭痛と
射るような光を想起させる耳鳴りを引き起こしながら。


そしてまた。
きっとあたしの口癖はキミにもうつって。
あたしの口癖がキミの口癖になって他のキミの口癖があたしの口癖になって前のキミの口癖があたしの口癖でそれがキミの口癖になって他のキミの口癖になってるころには前のキミの口癖はアノコの口癖になってアノコの口癖は他のキミの口癖になってキミとアノコの口癖は他のアノコの口癖があたしの口癖かもしれなくてキミの口癖はあたしの口癖で。

ところで。


手癖が悪いと言いますが。

口癖が悪いとは言わないのでしょうか?


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