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夕焼けいろが、スキ

夕焼けがスキなんて、なんかセンチメンタルすぎて。
なんとなく気恥ずかしいと若いころは思っていました。
なんかフツーだし。なんかセーシュンっぽいし。


でもねえ。
やっぱりやっぱりやっぱり
どう否定してみても

スキなものはスキなのです。


あたしがココにいることや
キミがドコカにいることや
同じ夕陽が今日は違う夕焼けを見せ付けることと


おなじくらい。

そう、
しょうがない、のです。

夕焼けの何がスキって、多分、色です。
でも何故かいつもそれは上手に伝わらなくて。


長く伸ばした髪を「夕焼けいろに染めてください」と言ったあたしに

受付のおねーさんは「オレンジ?」と
アシスタントさんは「ピンク系?」と
美容師さんは「え、ムラサキとかじゃないよね?」と

みんなちょっと困った顔で言うのです。

キレイと言って見上げた夕焼けは、
よく見ると毎日ちゃんと違って。
薄い血の赤、コンムラサキ、鮮やかなオレンジ、
コトバでは説明しきれないほど、いろんな色が滲むのです。
だけどどんな色でも、どんな組み合わせでも、
燃え盛る朱でも、泣き出しそうな菖蒲色でも。
ちゃんとそれは。
いつだって「夕焼けいろ」なのです。


ぜんぜんちがうのに。
ぜんぜんぜんぜんちがうのに。
いつだって同じようにやさしくて。
同じようにかなしくて、つらくて、ざんこくで、
でもなにより、
同じようにウツクシクて。
定義しようとすればいつだってすり抜けてしまうのに
「夕焼けいろ」の色はみんなバラバラに想うのに。


それなのにみんな。
「キレイ」と言って首を曲げて。
切なさや刹那さに乗じて
少しだけ泣いたあの日のことを思い出して。
もっと深く。首を痛いくらいに曲げてみたり。
センチな自分を嘲ってみたり。
涙を出さずに泣いてみたり。


バカみたいに似たようなことをみんなしてしまうのです。
とてもとてもミリョクテキな顔で。
悪戯な水彩画の前で
とても無力に
何色かもわからないいろに染まってしまうのです。


説明できないのに、ちゃんとそこにいて。
みんなをミリョクテキにする夕焼けいろにちょっと嫉妬します。
そのキレイさとそのイイカゲンサとそのチカラに。


イメージカラーが夕焼けいろになるように。
今のあたしの密やかな目標です。

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February 8, 2004 5:28 PMに投稿されたエントリーのページです。

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