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痕残しゲームが、スキ

結局のところ
ずっと同じ場所に同じ人といるなんてことはもう全然信じられないわけで
遅かれ早かれまた飛び立つのだと思うのです。
いつだってそう思うのです。
あたしかキミかあなたかモリモトさんかムックンかキョウコかハヤシダくんか誰か。
まあ誰でもいいんだけど。誰でも。
どっちが先かの競争のように
あたしたちは、どちらからともなく、きっと、

いなくなってしまう。

確かにそれはずっと先のことかもしれないし、明日起こることかもしれない。
もう起こってたりして。
けれどそれはあたしとキミだけの問題じゃ実はなくて、
つまりはヒトだけでなくて、

サヴァイブするということは、つまり失い続けていくことなのです。


「しかしですね。失うぶんだけ得るものがありますよ。」
「ほら、得たもの。そっちについて考えましょう。」


だよねー。ですよねー。


でもね。
失った代わりに得るものは、たとえ失ったものと等価だとしても
決して失ったものそのものではない。


それはごまかしちゃいけないと思うのです。


とはいえこんなことばかり鬱々と考えていても体力も抵抗力も免疫力も落ちて
しまいには肺炎なんかになっちゃうので。
最近これをゲームにしてしまうことを思いつきました。


名づけて


「痕残しゲーム」。

どうせ失うのなら。
いっぱい痕を残してやろうと。なんにでも。
つまりはどうやってうまく痕を残せるかの研究です。

あたしが「それ」を喪失したあとに
それでも「それ」があたしのことを思い出さずにはいられないような。

そういう、痕、を、「それ」に、つける。
最後の意地のような、悪戯のような、プレゼントのような、そんなもの。


縄師のような技術と賭博師のような大胆さとナノなんとか研究家の精密さとマリーの浪漫を
持てれば最高なのだけれどそうもいかないから不器用ながらいろいろと画策して
日々突き進むこの痕残しゲーム。
これは相手がヒトだとそれはそれで難しいし
ヒトで無い場合にはヒトで無いなりの独特の難しさがあります。
けど痕の残し方に拘ることは楽しくて美しくて醜くて。
そしてどうやら、あたしは自分がこれが割と得意な気がしてきています。


たとえば
吸殻が世界中の何百銘柄の中で最も美しいカールトン1mgを吸い続けていることも
最後の瞬間に手を伸ばせば届きそうなように長くこの髪を伸ばしてきたことも
忘れ物が多いことも、掃除が適当なことも、噛み癖があることも、
自分の数々の特性がようやく生かされるような気がして割りと
ウキウキなわけです。

特技は?

「お華と、お茶と、痕を残すことです。」
「昔はカヌー部だったんですが、最近は漕いでなくて。今は、痕を残すことです。」
「バイオリンを20年、サックスを6年続けています。あと最近、痕を残すことを始めました。」


ちょっと言ってみようかな。とか。思ってると。ほら。
楽しくなってきませんか。

ほら、実力を試したくなる。

喪失が、待ち遠しくなる。


でも面白いところは
ほんとうに痕に残るのはきっと全然違うとこなんだってこと。


それにもっと面白いところは
痕を残される準備はしていないはずなのに

きっとそっちの方がずっと多いって、こと。


そして今度は裏切られることが楽しみに変わる。

このように。

喪失の準備は、手が込んでいればいるほど、そのあとの楽しみがきっと増すのです。
(哀しみが減るのではないよ。楽しみが増えるのです。哀しみは、そんなに簡単に減らしてはいけないのです。)


ほら。ちょっと一緒に。やってみましょうよ。なんだか腹立たしくなったのなら、特に。

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August 12, 2005 5:53 PMに投稿されたエントリーのページです。

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