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June 2005 アーカイブ

June 25, 2005

自転車が、スキ


機械は主に人力以外の動力による複雑で大規模なものをいい
器械は道具や人力による単純で小規模なものをいうことが多い

と あたしの辞書には記されていたのですが


その場合、自転車は器械で、まさにその感じがスキなのかもしれません。
汗をかいて青筋を立てて筋肉に力を入れないとどこにも行けない感じ。
機械は利用するものだけれど、器械、ことに自転車は、身体の延長のような気がする。
デカルトっぽいかな。

だから例えば
誰かの喪失の象徴として。

毎日ある一定時間その人によって停められていたクルマやバイクが
ある日を境に無くなるよりも
その代わりに
その人によって停められていた自転車が無くなるほうが
ずっとずっと
残酷な気がします。


身体の痛みに還元されるようなリアリティ。

そのリアリティを語る代わりに

或いは

サドルの温かみを密かに撫でて誰かを愛しむという行為の
切迫した官能の崇高さとキモさについて思考してもいいでしょう。

或いは

全力疾走の後に急停車して両足スタンドを立て走り去ったとして
後輪が少しずつ少しずつ速度を落としながらゆっくりと廻り続ける、そのシーンの
至極単純な構図的美しさと
車も時間も感情も急には止まれないということについて思考してもいいでしょう。


いずれにしろ、自転車がスキです。
このリアルでやたら感傷的な器械がスキなわけです。


で、もうちょっとだけスキなところを付け加えると
自転車で迎えにきてもらうのが、スキです。

迎えにきてもらうのにちょうどいい速さ。

恋をするのにちょうどいい速さとも言えます。

クルマで颯爽と横付けされるのも、バイクの後ろに乗ってしがみつくのも
それはもう大好きなのですが、
その人が実際に現れるまでの待つ間に関しては自転車に軍配が上がると思います。

汗を払い抜け道を通り風を感じスピードをぐんぐんあげて口笛を吹いて
東京の郊外特有の夜の温かく湿った空気の中を


誰かがあたしのことを考えながら、リズムを立てて、やってくる。

その感じがたまらなくいいのです。
そしてその、中途半端な速さと、その時間を遣り過ごすこと。全部ひっくるめて。

というわけでここまで読んで気づいた人もいるかもしれませんが
あたしは、自分が自転車に乗るのがスキなわけではありません。
嫌いじゃないんだけどね。
なんでかっていうとうーん
うちの前の坂が立ち漕ぎじゃないと登れないほど急だからだと思いますけど。

でも、ちゃんと乗れますから。お生憎さま。
勝手に乗れないっていう噂、流さないでくださいってば(苦笑)


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